外傷による脱落歯について
わが子がスポーツ中にこけて前歯が抜けた!何をどうすればいいかわからない!
こんにちは、諫早駅イーサ歯科の歯科医師の原口です。
お子さんが運動の習い事や部活をしているといった方に向けてこのコラムを書かせてもらいました。
外傷で子どもの歯が抜けた場合、素早く適切に対応することができた場合、歯を元に戻せる可能性があります。
このコラムを読んで、大まかにでもやるべきことを掴んでいただければ有事の際にも対応をしやすくなると思います。
今から、保護者さんができる応急処置をわかりやすく説明します。
まず確認すべきこと
抜けた歯のほかに大きな傷がないかどうか。
歯が抜けているということは頭を強く打っている可能性が高いので、意識ははっきりしているかどうかなどを確認してあげてください。
親ができる応急処置(永久歯の場合)
1. 歯を探して拾う
- 抜けた歯が地面に落ちていれば、歯の「根っこ(尖った部分)」には触れずに、歯の頭の方(噛む部分)を持つようにします
2. 歯を洗う(汚れていたら)
- 軽く汚れている場合:
→ 水道水で2〜3秒間、軽く流すだけ(こすらない・洗剤NG) - こすったり、歯ブラシで洗ったりすると、歯の根にある重要な組織(歯根膜)を傷つけるのでNG
3. 歯を保存する
一番良い保存方法は以下の順です:
| 優先度 | 保存方法 | 備考 |
|---|---|---|
| 1 | 元の位置に戻す(再植) | 歯に汚れがなく、口の出血もそこまで多くない時に、子どもが協力できるならベスト。すぐに歯科へ |
| 2 | 牛乳につける | 殺菌されていて常温ならOK。低脂肪・無脂肪でもOK |
| 3 | 口の中(頬の内側)に入れる | 飲み込まないよう注意。4歳以下は避ける |
| 4 | 歯の保存液(市販のもの) | 学校や保健室にあることも。 |
| 5 | 水はNG(最終手段) | 長時間の保存に向かない。乾燥させるよりはいい |
4. すぐ歯科・口腔外科へ行く
- 抜けてから 30分以内が理想、1時間以内なら望みあり
- 土日や夜間なら、救急対応の歯科・口腔外科へ
親ができる応急処置(乳歯の場合)
- 歯牙の状況によっては戻さない場合もあり。戻せる場合は永久歯に準ずる
- 抜けた場所を清潔に保ち、出血があればガーゼで押さえる
- 歯科を受診し、隣の歯や永久歯への影響をチェック
子どもへの声かけと注意点
- 「大丈夫だよ。すぐお医者さんに診てもらおうね」と安心させる
- 泣いて口が開かない子は無理に触らない
- 出血が多ければ清潔なガーゼやハンカチを噛ませる
- 食べ物・飲み物は控え、なるべく早く歯科へ
覚えておくべきポイントまとめ
- ほかの部位に外傷はないか、意識ははっきりしているかの確認
- 歯が抜けたらできるだけ早く歯科へ(理想は30分以内)
- 歯の根は触らず、牛乳などで保存して歯科へ
次にその歯がどうなっていく可能性があるのかを書いていきます
再植後の 注意点・予後について
| 状況 | 予後 |
|---|---|
| ✅ 再植が成功した場合 | そのまま機能する可能性あり。定期観察が必要 |
| ⚠ 歯の根が溶ける場合(吸収) | 数ヶ月〜数年後に脱落することも |
| ⚠ 成長中の子ども | 歯は戻せても、成長に伴う影響(発育不全など)がある場合あり |
| ❌ 保存状態が悪い/時間が経ちすぎた | 再植せず、将来インプラントやブリッジを検討することもある |
子どもの場合の特記事項
- 成長途中の子は、歯根の成長が完了していないことが多いため、
- 神経が自然に回復する可能性がある(特に再植が早ければ)
- 歯根膜(歯の根を支える組織)をいかに傷つけずに再植するかが重要
- 将来的に歯並びや咬合(かみ合わせ)に影響が出ることもあるので、歯科医の経過観察が必要
最後に歯医者で外傷で抜けた歯をどうしていくかのお話をしていきます
🏥 歯科医院での治療の流れ
1. 問診と状況確認
- いつ抜けたか?(経過時間)
- どんな状況で?(転倒、ぶつけた、スポーツなど)
- 歯はどう保存されていたか?(牛乳?口の中?水?)
- その他のけがの有無(頭部・顎など)
- 乳歯か永久歯かの確認
2. 口腔内と周囲の診察・X線検査
- 抜けた部分の歯茎・骨の状態をチェック(割れていないか、感染がないか)
- レントゲンで歯槽骨(歯を支える骨)や他の歯への影響を確認
- 他にぐらついている歯やヒビがないかも確認
3.歯の再植(再び元に戻す処置)
- 保存状態がよく、30~60分以内であれば再植可能なことが多い
- 歯の表面を洗浄・消毒し、必要に応じて根管処置(神経の処置)を行う
- 抜けた歯を元の位置に戻し、必要に応じた手段で固定する(後述)
4. 歯の固定
- 必要に応じて元に戻した歯が動かないように、隣の健康な歯と接着剤やワイヤーで固定
- 固定期間:通常は1~2週間程度(根の状態によってはもっと)
5. 必要に応じて追加治療
- 抗生物質の処方(感染予防のため)
- 神経の処置(根管治療)は、後日改めて行う場合が多い
6. 経過観察とフォローアップ
- 定期的にレントゲンと診察を行い、歯の根や骨の状態をチェック
- 再植した歯が骨としっかり結合しているか(再接合)
- 歯の色の変化や歯根の吸収(失活)などのリスクをモニタリング
まとめ:歯科医院での主な治療
- 状況確認とレントゲン検査
- 再植できる場合は洗浄して戻す
- 固定して安定させる(1~2週間)
- 感染予防と必要な投薬
- 根の治療(必要に応じて後日)
- 定期的なフォローアップ(数ヶ月〜数年)


