むし歯について
こんにちは！ 諫早駅イーサ歯科の歯科医師の原口です。
今回は歯医者の長年の宿敵であるむし歯についてお話させていただきます。
むし歯とは何か 〜自分の歯を守るために知っておきたいこと〜
むし歯（正式には「う蝕」）は、多くの人が一度は経験する身近な病気です。歯が痛くなったり、しみたりする原因として知られていますが、その仕組みや予防法について正しく理解している方は意外と少ないかもしれません。
私たちの歯は、食事や会話など日常生活に欠かせない大切なものです。むし歯はその歯をじわじわと蝕み、放置すればやがて歯を失ってしまうことにもつながります。
今回は、「むし歯とはどのような病気なのか」「なぜむし歯になるのか」「どのように予防すればよいのか」などを、患者さんにもわかりやすく解説していきます。
◆ むし歯とはどんな病気？
むし歯は、口の中にいる細菌（特にミュータンス菌など）が食べ物の糖分をエサにして「酸」をつくり、その酸によって歯が溶けてしまう病気です。歯は体の中でもっとも硬い組織である「エナメル質」で覆われていますが、この酸には弱く、時間が経つにつれて少しずつ溶けていきます。
歯の表面が酸にさらされると、エナメル質の中のミネラル成分（カルシウムやリンなど）が溶け出し、歯が白く濁ったように見えることがあります。これが「脱灰」と呼ばれる初期段階です。ここで適切なケアを行えば、再石灰化といって唾液やフッ素の働きによって修復されることがあります。
しかし、脱灰が進んでエナメル質の奥の象牙質にまで達すると、むし歯は進行性となり、自然に治ることは難しくなります。やがて神経にまで炎症が広がると、激しい痛みや腫れ、場合によっては歯の喪失にまでつながってしまいます。
◆ むし歯の進行と症状
むし歯は進行段階によって治療法が異なります。以下は一般的なむし歯の進行と、それぞれの段階での特徴です。
- C0（初期う蝕）
歯の表面に白く濁った部分が見られます。穴は空いておらず、痛みもありません。この段階ならフッ素や適切なブラッシングで治る可能性があります。 - C1（エナメル質う蝕）
むし歯がエナメル質に限局している段階です。黒ずんだ点が見えることもありますが、まだ痛みは感じにくいです。 - C2（象牙質う蝕）
むし歯が象牙質に達すると、冷たいものや甘いものがしみたり、軽い痛みを感じるようになります。歯を削って詰め物をする治療が必要です。 - C3（歯髄う蝕）
むし歯が神経（歯髄）まで達すると、強い痛みが出ます。夜間に痛みで眠れないこともあります。この段階では神経を取り除く「根管治療」が必要になります。 - C4（残根状態）
歯冠部がほとんど崩壊し、根だけが残った状態です。痛みは一時的に感じなくなることもありますが、感染が広がると膿がたまり、重篤な炎症を引き起こす可能性があります。この場合、多くは抜歯の対象となります。
◆ むし歯の原因は？
むし歯の発生には「細菌」「糖分」「歯の質」「時間」という4つの要因が関係しています。これらは「むし歯の4大要因」と呼ばれています。
- 細菌（ミュータンス菌など）
むし歯の原因菌は、歯垢（プラーク）の中に潜んでいます。歯垢は毎日のブラッシングで取り除かなければどんどん増殖します。 - 糖分（主に砂糖）
細菌は糖分を栄養源として酸を作り出します。特に砂糖を多く含むお菓子やジュースなどはリスクが高いです。 - 歯の質や唾液の働き
人によって歯の強さや唾液の分泌量・成分が異なり、むし歯になりやすい体質の人もいます。唾液には歯を守る自浄作用や再石灰化の働きがあります。 - 時間（食べてからの放置時間）
ダラダラ食べをしていると、口の中が酸性状態のままになり、むし歯になりやすくなります。
これらの要因が組み合わさることで、むし歯は発生・進行していきます。とくに「頻繁な間食」「不十分なブラッシング」「甘い飲み物の習慣」は、むし歯リスクを大きく高めるので注意が必要です。
◆ むし歯はうつるって本当？
「むし歯は感染症」と聞くと驚かれる方も多いですが、実はこれは本当です。むし歯菌そのものは生まれたばかりの赤ちゃんの口には存在しません。大人から子どもへ、食器の共有や口移し、キスなどを通じて感染することが多いのです。これを「母子感染」や「家族感染」といいます。
もちろん、感染したら必ずむし歯になるというわけではありませんが、家族みんなが口腔ケアを意識することで、子どものむし歯リスクを大きく減らすことができます。
◆ むし歯を防ぐにはどうすればいい？
むし歯は予防可能な病気です。毎日の習慣が歯を守る第一歩になります。以下のポイントを意識しましょう。
• 丁寧なブラッシング
食後すぐの歯磨きが基本です。フッ素入りの歯磨き粉を使うと、歯の再石灰化を助けます。歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスも活用しましょう。
• 食生活の見直し
間食を減らし、ダラダラ食べを避けることが大切です。甘い飲み物（ジュースやスポーツドリンクなど）も控えめに。
• 定期的な歯科検診
自覚症状がない段階でむし歯を発見できれば、治療も簡単で済みます。最低でも年に1〜2回は歯科医院でのチェックを受けましょう。
• フッ素塗布・シーラント
特にお子さんには、歯科医院でのフッ素塗布や、奥歯の溝を埋める「シーラント」処置がむし歯予防に効果的です。
◆ おわりに
むし歯は自然には治らない病気です。
しかし、正しい知識と予防の習慣を身につければ、むし歯のリスクは大きく下げることができます。「歯が痛くなってから歯医者に行く」のではなく、「痛くならないように歯医者に行く」ことが、歯の健康を守る秘訣です。
自分自身やご家族の歯を守るために、今日からできることを始めてみませんか。
