子どもの指しゃぶりって大丈夫?歯への影響とその対処法
-
指しゃぶりとは
指しゃぶりは、乳幼児期に見られる一般的な行動で、多くの子どもが無意識のうちに指を口に入れて吸う動作を繰り返します。この行動は通常、安らぎを求めるためや、ストレスを感じたとき、眠る前などに行われます。新生児期から乳幼児期にかけて、指しゃぶりは自然な発達の一部として見られ、特に生後3か月から4歳くらいまでの期間に多く見られるものです。
-
指しゃぶりの原因
指しゃぶりの原因は多岐にわたります。例えば、以下のような理由が挙げられます
- 生理的な反射:新生児には「吸啜反射」と呼ばれる吸う動作が本能的に備わっており、これは母乳や哺乳瓶から栄養を摂取するための生理的な反応です。
- 精神的な安定:指しゃぶりは、子どもにとって心理的な安定を得る手段であり、ストレスや不安を和らげる効果があります。
- 好奇心や探求行動:成長過程での自己認識や自分の身体を知る過程として、指をしゃぶることがあります。
一般的には、2〜4歳頃には自然と指しゃぶりをやめるケースが多いですが、5歳を過ぎても続く場合には、歯や口腔への影響が心配されるため、注意が必要です。
-
指しゃぶりの歯科的な影響
指しゃぶりが長期間続くと、歯や顎の発育に影響を与える可能性があります。具体的には以下のような問題が生じることがあります。
○開咬(かいこう)
指しゃぶりが長期間続くと、前歯が上下でかみ合わない「開咬(かいこう)」という状態になることがあります。指をしゃぶることで、上の前歯と下の前歯の間に隙間ができ、正しいかみ合わせができなくなります。開咬は、前歯で食べ物をかみ切ることが難しくなり、咀嚼(そしゃく)や発音に支障をきたすこともあります。
○出っ歯(上顎前突)
指しゃぶりの力が上の前歯にかかると、上顎が前に押し出されるようになります。その結果、上顎前突、いわゆる「出っ歯」となる可能性があります。出っ歯は、見た目の問題だけでなく、口が閉じにくくなり、口呼吸になりやすくなることがあります。口呼吸は、口内の乾燥や虫歯、歯周病のリスクを高める原因となります。
○ 顎の変形
指しゃぶりが続くことで、指が上顎や下顎の発育に影響を与えることがあります。特に、親指を強くしゃぶる子どもでは、上顎が狭くなる「上顎狭窄(きょうさく)」や、下顎が後ろに引っ込んでしまうことがあります。これにより、顎関節症などの問題を引き起こすこともあるため、早期の対応が求められます。
○発音障害
指しゃぶりによる開咬や出っ歯の状態は、正しい舌の動きや歯の位置に影響を及ぼし、発音に支障をきたすことがあります。特に、「サ行」や「タ行」の発音に問題が出る場合が多く、これが原因で言語発達に遅れが生じることもあります。
-
指しゃぶりに対する歯科治療のアプローチ
指しゃぶりが原因で歯並びや顎の成長に影響が見られる場合、歯科医師は適切な治療を提案します。以下は、指しゃぶりに対する歯科治療の一般的なアプローチです。
○指しゃぶりの習慣をやめさせる
まず、歯科医師や親が協力して、指しゃぶりの習慣をやめさせることが大切です。子どもが自分からやめたいと思えるように、励ましやポジティブなアプローチを取ることが重要です。また、指しゃぶり防止のための特殊な装置(例えば、口腔内に装着するガードなど)を使用する場合もあります。
○矯正治療
指しゃぶりによって歯並びが悪くなった場合、矯正治療が必要になることがあります。特に、開咬や上顎前突が進行している場合には、早期の矯正治療が効果的です。矯正装置を使用することで、歯を正しい位置に戻し、かみ合わせを改善します。
○顎の発育を促す治療
顎の変形が見られる場合には、顎の発育を促す治療を行います。例えば、上顎の発育を促すための装置や、下顎を前方に誘導する装置などが用いられることがあります。このような治療は、子どもの成長期を利用して行うことが多く、早期に開始することで良好な結果が得られる場合が多いです。
-
親ができる家庭での対策
指しゃぶりをやめさせるためには、家庭での対応も重要です。親が子どもに対して適切なアプローチを行うことで、自然と指しゃぶりをやめることが期待できます。以下は、家庭で実施できるいくつかの対策です。
- 褒めてあげる:指しゃぶりをしていないときには、褒めてあげることで、子どもに自己肯定感を持たせます。自己肯定感の強化は、子どもが自発的に行動を改善する動機付けとなります。
- 手を使う遊びを増やす:手を使う遊びを増やすことで、指しゃぶりをする時間を減らすことができます。例えば、ブロック遊びやお絵かきなど、指先を使う遊びは有効です。
- 安らぎを与える:指しゃぶりが不安やストレスの発散である場合には、親が子どもとスキンシップを増やし、安心感を与えることが効果的です。
-
指しゃぶりと歯科への理解を深める
指しゃぶりは乳幼児期の自然な行動である一方で、長期間続くことで歯や顎に悪影響を与えることがあります。親としては、子どもの成長と発達を理解し、指しゃぶりが続く場合には適切なタイミングで歯科医師に相談することが大切です。歯科医師との協力のもと、子どもの口腔内の健康を守り、健やかな成長を支えるためのサポートを行いましょう。
7.まとめ
指しゃぶりは乳幼児期の一般的な行動であり、適切なタイミングで対応をすることで、子どもの健全な発育を促進することが可能です。定期的に歯医者に通院し、歯科医師に相談しながら適切なタイミングでのアプローチを行いましょう。