先天性欠如歯について
生え変わりの時期(だいたい幼稚園、保育園の年長さんから小学校1年生くらい)に大人の歯の確認のために全体的な大きいレントゲン写真を撮りましょうね、と言われることがあります。レントゲン写真を撮影することによって、余分な歯が無いか、足りない歯がないかを確認することもできます。
今回は乳歯や大人の歯の大体の生える時期、そして珍しいことではない大人の歯が足りないことについても詳しくお伝えします。
乳歯(子どもの歯)の生える順番
乳歯は全部で20本あります。
一般的な順番は、
生後6〜7カ月 下の前歯が生えてくる
生後8〜11カ月 上の前歯が生えてくる
生後11カ月〜1歳ごろ 上下4本ずつ揃います
1歳6カ月〜 奥歯(第一乳臼歯)が生える
1歳8カ月〜 犬歯が生える
2歳ごろ〜 奥歯(第二乳臼歯)が生える
2歳6カ月ごろに全ての乳歯が生えそろうのが平均的です。多少の前後はありますが、3歳半頃までに生えそろえば問題ありません。
永久歯(大人の歯)の生える順番
一般的に身体の成長と共に顎も成長し、大体6歳から乳歯が永久歯に生え変わります。
永久歯は28本、親知らずまで含めると32本あります。
6歳ごろ 下の前歯が生え変わり、6才臼歯(第一大臼歯)が生えてくる
7〜8歳ごろ 他の前歯が生え変わる
8〜9歳ごろ 犬歯が生え変わる
9〜11歳ごろ 他の奥歯が生え変わる
12歳ごろ 12才臼歯(第二大臼歯)が生えてくる
17歳ごろ 親知らず(第三大臼歯)が生えてくる
生え変わりの仕組み
- 乳歯の下で永久歯のもととなる歯胚(しはい)ができて、ゆっくりと成長していきます。
- 永久歯の歯冠部(お口の中に見える頭の部分)が乳歯の下で完成し、永久歯の根っこが作られ始めると、乳歯の根っこを溶かす細胞が現れます。
- 乳歯の根っこが溶かされて、段々グラグラして抜け落ち、永久歯が生えてきます。
永久歯が全て生えそろうのは、個人差はありますが12〜14歳ごろです。
先天性欠如について
永久歯が生まれつき足りず、生えてくるべき歯が生えてこないことを『先天性欠如』と言います。
原因は何ですか?
乳歯の下では将来永久歯になるための芽のようなもの(歯胚(しはい))がありますが、何らかの原因で歯胚が出来ない場合は永久歯が生えてこず、先天性欠如歯となります。
遺伝や歯の発育期における栄養障害、感染、薬剤、外傷などとも考えられていますが、はっきりとした原因は明らかになっていません。
どのくらいの確率でなるの?
2010年11月に日本小児歯科学会で行われた調査によると、10人に1人の確率で先天性欠如が認められたとのことです。
どの歯がなりやすい?
前から2番目の歯(側切歯)と前から5番目の歯(第二小臼歯)で多くみられます。
上あごよりも下あごの歯の方に起こりやすいです。
ずっと乳歯のままなの?
乳歯の下で育っている永久歯が十分育って萌出(お口の中に生えてくること)を始めると、その上にある乳歯の根っこが吸収されて短くなり、グラグラし始めて抜けます。
永久歯が欠如している場合は、乳歯の根っこは吸収されないので本来抜けるべき乳歯が大人になってもお口の中に残ります。
大切に使っていただけると乳歯の場合でも30代くらいまで使える場合もあります。しかし、乳歯は永久歯に比べて歯の質が弱いためむし歯が進行しやすく、根っこも短いため、永久歯の代わりに一生残すことは非常に難しいとされています。
抜けた時はどうしたらいいの?
残念ながら乳歯が何からの原因で抜けてしまった(またはむし歯やグラグラしたりして抜歯した)場合、その部分は歯のない状態となります。歯がない状態が長く続けば、歯のない部分に両隣りの歯が倒れてきたり、噛み合わせの上の歯が下に伸びてきたりして、噛み合わせや歯並びが悪くなる場合があります。
他の歯を長持ちさせるためにも、抜けてしまった隙間を埋める必要があります。その場合は一般的な欠損治療と同じ方法が多いです。
方法としては、
- 矯正
他の歯を移動させることによって、永久歯のないスペースを閉じる治療です。
- ブリッジ
両隣りの歯を削って支えにし、永久歯がない部分にダミーの歯をいれます。
- 部分入れ歯
両隣の歯にバネを引っ掛けて、部分的な入れ歯でスペースを補います。
- インプラント
顎の骨の中に人工的な歯の根っこを埋め込み、その上に被せ物を被せます。
ブリッジやインプラント治療の場合、顎の骨の成長に合わせて治療を行う必要があるため、手術や装着は大人になってから行うことが望ましいとされています。それまでの間は乳歯を残したり、部分入れ歯を一時的に付けてもらったりして他の歯の位置を保つようにします。
先天性欠如歯は永久歯の生え変わりの時期にお口の全体的なレントゲン写真を撮影することで確認することが出来ます。早めに確認しておくことで、どの時期にどのような対応をするのか今後の方針を決めることもできます。治療方法は先天性欠如の本数や部位、全体的な噛み合わせによって様々なので、かかりつけの歯医者さんと相談してみましょう。